ともすれば人生の大半の時間を占める仕事、充実した人生を送るためには仕事の面での充実度を上げることが大事だと考える人は少なくありません。
しかし、寝食を忘れるほど仕事が楽しいと感じている人はほんのわずかで、多くの人はなんとか仕事の時間をやり過ごすことに心を砕いたり、ストレスを溜めて仕事以外の生活にまで影響を及ぼしてしまっています。
気分転換や趣味で発散しながらやり過ごすのも1つの手ですが、できるなら「仕事が楽しい」と思いたいもの。考え方や見方を変えるだけで、仕事が楽しくなる方法はたくさんあるのです。
なぜ仕事は楽しくないか
好きな仕事じゃない
本当は好きな仕事をしたいけれど生計を立てるため、家族を養うために仕方なく今の仕事をしているという人も多いのではないでしょうか。一日の大半を費やす仕事なのに「ここは自分の本当の居場所じゃない」という気持ちを持ちながら過ごすのはつらいことです。
また、仕事でトラブルがあっても望む仕事をしているなら解決策を考えて実行することが自分や会社にとっての学びや財産になると思えます。しかし、望まない仕事の場合はそのように考えることも難しく、ミスやトラブルに恐怖を感じて、それがストレスになってしまうこともあります。
今の仕事が好きな仕事をするための通過点だと割り切ったとしても、会社の利益にとってはもちろん、自分の毎日を充実するためにも仕事を楽しくする工夫は大事なのです。
やりたい仕事に就けても些末なことに追われてばかり
望む仕事に就けても自分の本領を発揮できるのはほんの一瞬で、その他の時間は準備や対応、事後処理や報告などに追われてしまうと、モチベーションの維持も一苦労です。
または、望む職種の企業に入れても、下積みや事務的作業ばかりで疲れてしまうこともあるでしょう。
仕事の条件が悪い
収入が少ない、残業が多い、正社員でない、ボーナスが出ないなど、条件面についてはつい他人や世間一般と比べてしまうものです。待遇がよく、収入もよければ充実した生活を送ることも可能になるでしょう。
ただ、仕事の条件が良いことが、そのまま仕事の楽しさであるとは言えません。条件がよくても仕事を楽しめない人はいます。また、経済的な安定や社会的な保障が整備されていることで家庭生活や余暇の充実にはつながりますが、仕事そのものの楽しさとは少し視点がずれてしまいます。
今回は仕事そのものの楽しさに焦点を当てますが、望む仕事に就いても条件が厳しすぎて楽しむどころではないという場合は、条件面改善の工夫も真剣に考える必要があります。
職場の人間関係が悪い
1日の大半を過ごす職場の雰囲気はとても大事で、「同僚や先輩がいい人だから毎日楽しい」という人もいれば、人間関係の悪さで仕事に集中できずに困っている人もいるでしょう。
しかし、これも仕事の楽しさそのものとは直接関係がありません。ただ、仕事をより充実するためには仕事の仲間はとても重要な要素です。
友だちと一緒に起業した人などを見ると、気心が知れた人と仕事ができて楽しそうでうらやましい面もあります。反面、友だちと仕事をして失敗しているケースもよく見かけます。厳密にいえば友だちの延長で仕事をするのではなく、仕事の仲間として関係を構築しなおしているからうまくいくのです。
収入が少ない
収入が多いほうが嬉しいのは誰も同じことですし、効率を重視して自分の仕事は時間給でいくらか考えるものです。
ただ、収入と時間と楽しさが比例するわけではありません。他に目標があって貯金をするために仕事をしている人は、収入が増えることに喜びを感じますが、仕事そのものに楽しみを感じているわけではない、むしろつらい仕事でもがんばっている状態です。
収入は大事ですが、仕事の楽しさを考える上では副次的なものであると言えます。
仕事を楽しんでいる人に学ぶ9つのコツ
では、具体的に仕事が楽しいとはどんなことを指すのでしょうか?仕事を楽しんでいる人から学んでみましょう。
自己イメージがある、でも自己イメージを変革することもできる
自分が好きなこと、譲れないこと、向いていること、楽しいと思うこと、自分について知っている人は自分が楽しいと思える仕事を見つけやすいでしょう。
ただ自己イメージが強すぎたり、それに囚われすぎると、自分についての新しい可能性を閉ざしてしまうことになりかねません。自己イメージは楽しいと思える仕事を探すことに役立ちますが、脱出しにくい自分の殻になることもあります。
可能性に対して開かれた態度を持ち、自己イメージすら柔軟に変えていける人は、より楽しい未知の仕事のチャンスが訪れた時につかむことができるのです。
好きなことを仕事にしている、あるいは自分のスキルを活かせる仕事をしている
望まない職業に就くよりも、好きなことを仕事にできているほうが、仕事を楽しめます。
もっと言えば、自分が好きで学んだり身に着けたスキルを活かす場があれば、仕事に喜びを感じやすくなります。
自分で仕事を開拓している
英語が好きだから通訳、グラフィックデザインを学んだからウェブデザイナーといったように、知識やスキルが仕事や就職先の業務内容に直結している人ばかりではありません。
それでも今いる場所で自分の好きや得意を活かして、充実している人はたくさんいます。そういう人は自ら楽しい仕事を開拓しています。「デザインなら得意なので、チラシを作るときは任せてくださいね」、「英語で電話対応が必要な時は声をかけてくださいね」といったように、小さいところから実績を作って、いつの間にかその分野で頼られる存在になるのです。
仕事にやりがいと感謝を感じている
好き=仕事とすぐに結びつかなくても、一番の得意分野でなくむしろ未知の分野でも、おもしろさとやりがいを感じるものです。
自分の得意分野じゃなければ仕事とはいえない、そんな思い込みやこだわりがある人はいったん脇に置いてみましょう。「自分が知らなかったこんな仕事もあるんだ」、「この仕事はこんな風に人の役に立っているんだ」、「仕事を通して、収入も得ながら広い世界を知ることができた」とありがたさを感じることができたら、仕事の楽しみは広がっていくはずです。
必要なら寝食を忘れてプロセスに集中できる
仕事は1人では成り立たないため、繁忙期もあれば閑散として暇に感じる時期もありますので、厳密に対価を時給に換算するのは難しいことです。
忙しい時期に充実度を感じられるかどうかは、その仕事を楽しめているかどうかの1つのバロメーターともいえます。プレゼンの準備が大変だったけれどそのプロセスを楽しめた、決算期に大慌てだったけれどばっちり数字を合わせることができてうれしいと感じるように、必要な時には必死に打ち込めるならば、その仕事は楽しい仕事と言えるのです。
問題が起こっても、改善のための工夫も楽しめる
どんな仕事も一人では完結しません。同僚や上司、クライアントや取引先、お客さんがあってこそ仕事は成り立ちます。ですから、自分にとって完璧でも、相手が同じように感じるとは限りません。
また、相手あっての仕事なので、問題が生じることもしばしばです。問題点を指摘されたり改善の要求をつきつけられることも当然あります。
そんなとき、指摘した相手に「あの人はわかっていない」と敵意を向けても仕事は楽しくなりません。
指摘を受けて改善することで、その仕事の質が上がったり、その分野そのものの発展に貢献できる可能性のほうに注目しましょう。目先の些末なことに足をすくわれず、より上位の目標を見ることができれば、問題解決や改善そのものも楽しい作業になるのです。
遊び心があって、試すことが好き
仕事は時給換算できると思い込んでしまうと、上司の指示やマニュアルに書かれていること以外を行う余裕や余地がなくなってしまいます。
マニュアルに書かれていることをその通りにこなせることは仕事の基本であり、最初からマニュアルを無視することは反則です。とくに、危険な仕事や人に関わる仕事の場合は、マニュアルはリスク回避のために必要な原則です。
遊び心というものは、原則があって初めて生きるものであり、客観的に自分や周りを見る余裕があって初めて発揮できる力です。ファーストフードチェーンの地域オリジナルメニュー、企業オリジナルのユニークな接客などは、遊び心から生まれ、試したり工夫したりする中で形になっていくのです。
工夫を考えること、試してみること、提案できる人、必要な時に機転を働かせることができる人は、仕事を何倍も楽しむ可能性を持っている人なのです。
独りよがりにならない
自分の意見や価値観が首尾一貫していることは、仕事の上でも大事なことです。しかし、それと独りよがりになることは違います。
仕事において自分の価値観を反映して、自分が楽しむことができても、顧客やユーザーの意向を無視していては、業績にはつながらず、自分の殻を分厚くしてしまうだけです。
様々な人とのつながりの中で仕事があることを意識し、多様な人の意見を聞く姿勢を持つことは、新しい楽しさの可能性を開いていくことでもあるのです。
使命感と貢献意識を持つ
仕事に関する喜びの中には、収入や達成感で自分が満たされる自己実現の楽しさの他にも、誰かの役に立つ喜びや充実感とがあります。どちらも大事で、両方のバランスが大事です。
しかし、両者のバランスが取れていないために、本当に楽しいと思うに至っていない場合もよくあります。仕事を通して自分を満たそうとしているけれどどこか虚しさを感じる人は、後者を意識してみましょう。反対に、他人を満たす使命感に燃えているけれど、いつも燃え尽きて仕事が楽しめない人は、自分が仕事を通して満たされたいことを意識してみましょう。
仕事を楽しんでいる人は、自己実現と使命感のバランス感覚がよい人なのです。
まとめ
仕事を楽しむことは、好きな職業についていても、望む職業についていなかったとしても可能です。望む職業に就いたけれど、楽しさを感じられないという人もいるかもしれません。仕事を楽しむためには、自分で仕事のかじ取りをして工夫や改善を重ねることに喜びを感じたり、自己実現と貢献意識のバランスが大事です。望む職業についていなかったとしても「自分はこの仕事に向いていない」と思いながら一日を過ごすよりも、「ここで何ができるか」を考えて工夫をすることで、仕事をする楽しさを自分から広げてみませんか。