事なかれ主義を脱したい人のためのコミュニケーション術!波風は立てていい!

人生

事を荒立てたくない、波風は立てたくない、だから解決すべき問題があるにもかかわらず見ないふりをする、日本社会にはありがちな姿勢のことを事なかれ主義といいます。また、見ないふりをせずに真っ向から立ち向かおうとする事なかれ主義とは逆のタイプの人は、「出る杭は打たれる」という言葉があるように、嫌われたり押さえこまれたりします。

もめ事や対立がないほうがが平和でよいと思われがちですが、一見平和に見えても関わる人の心の内ではざわざわは止むことはなく、問題の本質とは別のところで発散のはけ口が必要だったりします。また、最初は小さな取るに足らない問題だと思っていたことが、フタをし続けた結果問題が大きく膨れ上がり、取り返しのつかないことになったりします。

自分や周りに蔓延する事なかれ主義を脱したい、そう思うけれど何をすればよいかわからないという人はたくさんいるでしょう。ただ、長年それに慣れてきた人や組織を変えることはとても難しいことです。けれど、自分を変えることはできますし、それによってもめごとから目をそらし続けたモヤモヤ感から脱し、自信をつけることはできます。事なかれ主義の問題点と自分でできる改善方法を一緒に考えてみましょう。

事なかれ主義の問題点 特徴とは

事なかれ主義の問題点 特徴とは

事なかれ主義を貫いていれば、平和な日常を送ることができそうだと誰もが考えます。しかし、多くの人がうすうす気づいているように、その平穏は非常に脆いものだということも理解しておかなければなりません。

見ないふりをしてももめごとや問題は消えない

事なかれ主義の人は、できるだけ穏便に日々を過ごしたいと考えます。そのため、気になることがあっても、いちいち騒ぎ立てるほどのことではないと心の中で言い訳をしがちです。

また、自分が問題を明るみに出すことで、他の人が自分を疎ましく思わないかが気になって、思ったことを呑み込んでしまう傾向があります。

しかし、見ないふりを決め込んでも、もめごとや問題はすでに存在しており、蓋をしたつもりでもずっと心の中でくすぶり続けることになります。

塵も積もって大きな問題に発展する

組織の体質として事なかれ主義がはびこっている場合、1人1人の「この程度なら」が積もりに積もって、問題を解決できずにこじらせてしまうことがあります。

食品偽装問題などのケースでは、関係者の多くが「こんなに大きな問題になるとは思わなかった」、「気になっていたけれど自分ではどうしようもないと思っていた」といったコメントをしているのが印象的です。

事なかれ主義がはびこる組織では、本来の目的よりも波風を立てずに沈黙を守ることに貴重なエネルギーが使われてしまいます。

多くの人は傍観者として関わっている

先の食品偽装の問題や、いじめの隠ぺいなど、事なかれ主義に関わる問題は、責任者やいじめる本人の他にも様々な人が関わっています。判断を下したり、いじめの手を下す人は数人ですが、その他大勢は無関係ではなく、「傍観者」という立場で関わり、問題に加担してしまっています。

「傍観者」には自分もその問題の一端を担っているという当事者意識や責任感が薄く、「私には関係ない」、「仕方なかった」といった言い訳や、「責任者がすべて悪い」といった責任を他の人に転嫁する傾向があります。

心のどこかで恐れを抱えて生活している

責任者やいじめの張本人であれ、傍観者であれ、問題にかかわっていることには変わりありません。

そして、もめごとや問題が明るみに出ないうちは、一見平穏な空気が流れているように思えます。しかし、実は水面下では「大きな問題になったらどうしよう」、「私の責任にされたらどうしよう」、「次のターゲットは私かもしれない」とビクビク、ヒヤヒヤしています。

事なかれ主義の人は穏やかな日常を誰より願っていながら、その心の中は恐れでいっぱいという矛盾を抱えて生きていかねばならないのです。

事なかれ主義の反対―問題に向き合える人や組織の2つの特徴

事なかれ主義の反対―問題に向き合える人や組織の2つの特徴

では、事なかれ主義の弊害やデメリットに飲み込まれてしまわない人や組織とはどのようなものなのでしょうか、その特徴を見てみましょう。

ビジョンや目標が明確

事なかれ主義の人や組織は「こうありたい」という理想のビジョンや目標が不明確だったりきちんと共有されていないために、人の和を乱さないことが問題解決より優先されてしまいます。

反対に、事なかれ主義に踊らされない人や個人は、問題が起きてもビジョンや目標に基づいて軌道修正をしようという気持ちが動き、行動することができます。

何でも言い合える、受け止めあえる雰囲気

「こんなことを言ったら排除されるのではないか」、そんな雰囲気が蔓延しているところでは、気づいたことや考えたことを口に出せず、事なかれ主義に甘んじてしまうことになります。

自分の気持ちや意見を適切に伝えることができる、また誰かの意見も押し殺さずに受け止めることができる人、そういう人を大事にする組織は、問題が起こっても早期発見早期解決に導くことができます。

波風を立ててもこじれない!コミュニケーションのコツ

波風を立ててもこじれない!コミュニケーションのコツ

事なかれ主義はもう懲りた、でも波風を立てたら嫌われたり、陰口を言われたり、もしかすると排除されるかもしれない、そう思って自分の殻から抜け出せない人もいるでしょう。

しかし、波風は立ててよいのです。そして、コミュニケーションのコツさえつかめば出る杭として打たれたりせず、問題提起として受けとめてもらいやすくなるのです。そのコミュニケーションのポイントを押さえて学びましょう。

こんなコミュニケーションはもめごとや問題を悪化させる

いくら正しいことを述べていても、相手の責任を追及し攻撃するような物言いをしてしまうと出る杭として打たれてしまったり、排除されてしまうことがあります。また、相手によっては「平穏を乱す面倒な人」として避けられてしまうこともあるでしょう。それでは元も子もありません。

言い分はそれぞれ、相手の心のシャッターを閉じる物言いではなく、相手の本心を引き出すことが大事です。事なかれ主義の人や組織がいったん心のシャッターを閉ざすと再び空くまでに時間がかかり、問題がどんどん先送りになってしまいます。一見遠回りのように見えますが、丁寧なコミュニケーションが、一番「早期発見・早期解決」への近道なのです。

脱事なかれ主義!物事や問題を解決しやすくするコミュニケーション

脱事なかれ主義!物事や問題を解決しやすくするコミュニケーション

聞き上手になる-相手の言い分をしっかり受け止める

いくら正論であっても、筋が通っていても、自分の言い分だけを貫く人はフェアな人とは言えません。また、人の言い分も聞かずに一方的に正しいことを言う人の前では、事なかれ主義の人は心のシャッターを閉ざして受け入れないでしょう。

まずは、聞き上手、受けとめ上手になることが第一です。その大事なステップを抜かして自己主張ばかり練習しても、事なかれ主義の壁を突破することはできません。

まずは相手の言い分、事なかれ主義を貫く背景、不安、恐れなどをしっかり受け止めましょう。自分も似た気持ちを感じたことがあるかもしれません。受け止めた上で、相手の不安や恐れを一緒に解消するために、できることを探りましょう。

私を主語にして私の気持ち、提案を話す

攻撃的コミュニケーションのまずさについて触れましたが、伝えたいことを相手に攻撃と受け取られないようにするためにはコツがあります。それは「私」を主語として話すことです。

反対に攻撃的コミュニケーションの特徴は、「あなた」を主語にした話し方です。「あなた」を主語にすると、「あなたが悪い」、「あなたのせいだ」、「あなたはいつも~だ」といったように、まるで攻撃されているように響くのです。それで、相手は攻撃されたと思って、自分も攻撃をし返してたり、あるいはシャッターを下ろして攻撃を避けてしまいます。これでは、いつまでたっても問題の核心にたどり着きません。

「私」を主語にして、そこに私の気持ちや提案を乗せれば、相手は攻撃されたと思わないので、話の内容そのものを受け止めやすくなります。例を挙げてみます。

「私は、それを放置することで問題が大きくならないか心配です。だから、その問題についてそれぞれが思っていることを話してみませんか。」

時間はかかるかもしれませんが、問題や人間関係をこじらせることなく、率直に問題を話し合うことに向かうことができるのです。

自分の言葉に責任を持つ

「責任を持つ」、難しいように聞こえるかもしれませんが、先に紹介した「私」を主語にして話す方法を使うことで、それが自然とできるようになっていきます。

「あなた」を主語にして「あなたが悪いのだ」と言っているうちは、相手に責任転嫁をすることに終始しているだけです。

私の言葉にや態度に責任を持つこと、それは傍観者になりがちな事なかれ主義の人にとっても大事なことです。「私」を主語にして自分の気持ちや提案を話すことで、事なかれ主義の人にも、自分の言葉に責任を持つコミュニケーションの方法を伝えることもできるのです。

大火事になる前に、煙が燻っている程度で消火する

火が燃え広がってからでは被害が拡大し、消火に時間もエネルギーもかかります。脱事なかれ主義のコミュニケーションにおいても同じことが言えます。問題が大きくなってから、相手が心のシャッターを閉じてしまってからでは手遅れになることがあります。

ちょっときな臭いなと感じたレベルで率直に言い合える関係を作っておくことが大事です。聞く姿勢と攻撃しない気持ちや提案の伝え方を押さえていれば、関係が気まずくなることもありません。

まとめ

多くの人は誰も傷つけない、平穏な状態を維持するために事なかれ主義であることを選んでいますが、結局のところ、様々な恐れやリスクを抱え込んでしまっています。そして、長い時間をかけて慣れ親しんだ事なかれ主義の体質を変えるには時間がかかります。

それでも、紹介したコミュニケーションを使い続けることで、自分も事なかれ主義に加担しなくて済む上、問題提起受け止めてもらいやすくなります。焦らず、笑顔で、脱事なかれ主義コミュニケーションを広げていきましょう。