表情や体つき、性格に個性があるように、声の大きさも人それぞれです。しかし、声が小さいことを理由に学校生活や部活で注意される、仕事の接客や電話応対、大事なプレゼンで「声が小さくて聞こえない」と指摘されるなど、実生活で不都合を感じて苦しんでいる人もいることでしょう。

現代社会では、学校でもはきはきと大きな声で話すように指導されるので、もともと声が細くて通りにくい人は、それをコンプレックスとして抱えてしまうこともしばしばです。

声が小さい原因は身体的な要因の他に、心理的な要因であるケースもよくあります。ここでは、心理的な要因による声の悩みを少しでも解消するためのトレーニングについてご紹介します。

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声が小さい様々な原因とは

声が小さくなる一般的な要因

声が小さくなる一般的な要因

ボイストレーニングの指導者である石神久資さんは、声が小さい原因を次のようにまとめています。

1 肺から声帯を通して十分な量の空気が送られていない。息を出すための筋肉が弱い。肺活量が小さい。

2 肺から十分な量の空気が送られているが、声帯がきちんと閉じていないため、息が声帯の隙間から漏れて、声帯が十分に振動(震えること)していない。

3 ある程度の音量は出ているが、人間にとって聞きやすい範囲の周波数(2500~4000Hz)が強く出ていない(一般に、男性の低い声よりも、女性の高い声のほうが言葉を聞き取りやすいのです。)

※参考 石神久資、2015、『小さすぎる声を大きくする方法:中学生から大人まで、ひとりでできるボイストレーニング』、アートジャム 出版部

部活や合唱の練習で、職場の応対で、「もっと大きい声を出せ」と言われてもどうしていいかわからないから悩んでいるわけですが、このように具体的に原因がわかると、対策への道が開けてきますね。

生物学的要因と心理的要因

生物学的要因と心理的要因

そして、例えば家族や友人と話している時も常に声が小さい場合は、声帯や舌などの発声器官の異常、呼吸のための筋肉が弱いなどの身体的な問題、息と声を出すタイミングが合っていない、家族全員の声が小さく大きな声で話す習慣がないなどが考えられると言います。

それに対して、家族や友人と話しているときは十分声が大きいのに、学校や職場では声が小さくなってしまうときは、心理的な要因で声帯が硬く緊張して狭くなってしまうことが考えられると言います。

自分や周りの人はどちらのタイプでしょうか。

今回は、後者の心理的な要因で声の悩みを抱えている人に向けて、メンタル面からのアプローチを中心にしています。

前者の人が具体的に声を大きくするためには、専門家の指導の下に行うボイストレーニングが有効です。部活やバイト先で先輩に叱られるからと言ってやみくもに大声で叫ぶ練習をしてしまうと、デリケートな声変わりの時期に声帯を痛めたりする危険もあります。ボイストレーニングの指導者が身近にいない場合で、とくに何か疾患によって声が出しにくい疑いがある場合は保健室の先生、耳鼻咽喉科、または内科か呼吸器科のお医者さんなどで見てもらいましょう。疾患の心配がなければ、発声方法について書かれた本を参考にして、自分でトレーニングを積むこともおすすめです。

また、後者の人であっても、心の傷が深く、自分で対処可能な範囲を超えている場合は、心療内科の医師に相談して、自分に合った適切な治療を受けましょう。

心の緊張で声が出ないいくつかの 特徴

自分に自信がない

自分に自信がない

自分の話は価値がないという思い込み

自信がない人の背景には、強い思い込みがあります。人は「みんなに好かれなくてはならない」、「いい子でないと愛されない」など、実に様々な思い込みに囚われて自信を無くしていきます。人前で声が小さくなる人は、とくに、「みな面白い話ができるのに、私の話には価値がない」と決めてかかっているのかもしれません。

自分の声が嫌い

録音した自分の本当の声を聴いて幻滅して「人に聞かせたくない」と思った経験がある人は少なくないでしょう。頭蓋骨に響いて耳に届く自分の声と、人が聞いている自分の声は違います。周りに聞こえている声が自分の声、それを受け入れて慣れていくことも必要です。

対人関係の失敗とコンプレックス

対人関係の失敗とコンプレックス

自分の声をからかわれると、ますます自信を無くして話すことがつらくなります。思春期の声変わりの時期にもよくあることでしょう。また、生まれつきの吃音、強い訛りなどが気になって、声を出すことが嫌になってしまうこともあるでしょう。

人前であがりやすい

人前であがりやすい

学校で発表するとき、仕事で報告やプレゼンをするとき、プレッシャーを感じて緊張が高まり、いつもの声が出せない悩みを抱えている方もいます。うまく話そうとすればするほど緊張で空回りしてしまう経験がある人は、本番に弱い人というレッテルを張られて、自信を無くしがちです。

おすすめ発声トレーニング

自分で取り組める発声の練習法をあげてみます。練習はリラックスできる場所と時間を選んで、落ち着いた状態で行いましょう。

腹式呼吸は心身の緊張も解きほぐす

腹式呼吸は心身の緊張も解きほぐす

ボイストレーニングなどでも必須の腹式呼吸は、呼吸をした時にお腹が膨らんだりへこんだりする呼吸法です。声が出ていない人は呼吸をした時に胸までしか空気が出入りしていない可能性があります。腹式呼吸の方法は様々なところで紹介されていますが、体の力を抜いて立った状態か、または仰向けに寝そべってリラックスした状態で行いましょう。

呼吸法はあがり症やプレッシャーを感じる職業の人が、緊張で脈拍が早くなったり汗をかいたりするときに、自律神経に働きかけて緊張をほぐすための方法としても取り入れられています。

緊張すると呼吸をすることさえ忘れてしまうもの、腹式呼吸を習慣にして、普段から心身のリラックスを心がけましょう。

発声練習で筋肉の緊張をほぐす

発声練習で筋肉の緊張をほぐす

首回り、舌、あご、表情筋など、声を発するといろいろなところが動きます。アナウンサーの発声練習などを参考に、いつもより大きく口を開いて、どの筋肉をどう動かしたらよい声がでるかを探りながら声を出してみましょう。「ア、エ、イ、ウ、エ、オ、ア、オ」のような簡単なものから始めましょう。

おすすめは、外国語で発声練習をすることです。英語の母音も子音も、日本語の音を出すときとは全く違う舌や筋肉の動きが必要になります。英語ネイティブの発生を参考にしながら母音や子音を一音ずつ発生してみましょう。しっかり取り組むと、舌や顔の筋肉が痛く感じますが、それは普段使わない筋肉が鍛えられている証拠です。

自分の声に慣れる

自分の声に慣れる

自分の声を録音して聞いてみましょう。「変な声」に聞こえて戸惑うかもしれませんが、これがまぎれもなく人に聞こえている自分自身の声なのです。少しずつ慣れ、滑舌や声のトーンなど、無理なく改善できるところは練習して改善していきましょう。

緊張を味方につけるメンタルトレーニング

緊張を味方につけるメンタルトレーニング

まずは発声に関するトレーニングを紹介しましたが、対人関係の緊張を解きほぐすには、心理面そのものに働きかけるトレーニングが有効です。スポーツ選手やビジネスパーソンが取り組んでいるメンタルトレーニングの一部をご紹介します。

即声が出るようになる直接的な方法ではありませんが、繰り返すことで、対人関係やプレッシャーがかかる状態で自分のバランスを保てるようになります。

緊張している自分を受け入れる

緊張している自分を受け入れる

緊張している自分を受け入れること、これは大前提として必要なことです。緊張を押し殺そうとすると、ますます声帯や舌、顔、そして全身の筋肉がこわばります。

緊張することは悪いことではありません。アスリートや演奏家が最高のパフォーマンスを出せるときは、緊張感のないリラックス状態ではなく、緊張とリラックスのバランスがとれた状態の時なのです。

自分はどんな時に緊張して、その時にはどんな反応があるか、記録しておくと、自分の緊張のパターンがつかめてきます。緊張とリラックスのバランスがとれた状態を体験することができたら、その時の様子も書き留めておきましょう。

筋弛緩法

筋弛緩法

ストレスの多い現代社会では、リラックスしているつもりでも、体の各部分が常にこわばっています。そのような状態が当たり前になると、心理的な緊張による筋肉のこわばりや、ストレスを知らせる体のサインに気づきにくい体質になってしまいます。

筋弛緩法は、体の一部分ずつ、緊張都市間の動作を繰り返すというとても簡単なリラクゼーションの方法です。リラックスした姿勢で、腹式呼吸で息を整えてから始めましょう。

まず、左手のこぶしを例にしてみます。ゆっくりと力を入れ、筋肉の緊張の変化を感じながらギューッと握っていきます。緊張を十分味わったら、息を吐きながら少しずつ脱力していきます。次は右手のこぶし、上腕、肩、首筋、と部位を変えていきます。緊張を感じやすい部位だけでも良いので、集中してやってみましょう。

緊張した状態と脱力した状態をしっかり体に刻みましょう。終了するときは、消去動作を行います。手のひらを握って開く動作を数回繰り返し、大きく伸びをして、深呼吸で締めくくります。

簡単ですが、繰り返すことで、ストレスや緊張による筋肉の硬化をリセットしやすい体になります。

自律訓練法

自律訓練法

ドイツの精神医学者シュルツ博士が考案した、暗示の力を借りて副交感神経を優位にし、リラックス状態を作り出す方法です。通常はいくつかの公式を医師の指導のもとで行いますが、1人でもできる簡易版がメンタルトレーニングでも紹介されています。

こちらも始めるときは腹式呼吸で息を整え、リラックスした状態で行います。終了するときは消去動作を必ず行いますが、これは筋弛緩法で行った消去動作と同じです。

気持ちがとても落ち着いている

寝ころんだ状態で軽く目を閉じ、「気持ちがとても落ち着いている」と心の中で繰り返します。自分が落ち着く場所や状況をイメージするとやりやすいです。

手足が重い

上記で気持ちが落ち着くのを感じたら、次に移ります。手足の重さを感じるのですが、利き腕から始めましょう。「右手が重い」と心の中で繰り返し、重さを感じるようになったら左手、手がすんだら右足、左足と部位を変えて繰り返します。

最初は難しいですが、無理やり力を籠めたりせず、自然と重みを感じるまで待ちましょう。体の一部が重くなるということは、力が抜けたということです。脱力までしっかり時間をとりましょう。

手足が温かい、額が涼しい

同じ要領で、次は「右手が温かい」と繰り返しながら、内側からじわじわ温度が上がっていく様子をイメージします。1~2だけでも十分ですが、時間があれば「額が涼しい」にも進んでみましょう。

まとめ

声が小さいことはマイナスではなく、1つの個性としてとらえられますが、もしなんらかの要因、とくにメンタル要因でもともとの声が出にくくなっているならば、その要因から自分を解放することが大事です。焦らず、じっくり取り組んでみましょう。

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