生きがい探しのヒント~生きがいのある人生を望む人ために

やる気・向上

毎日ハリのある人生を送りたいのに、生きがいが見つからなくてつらいという人はたくさんいます。あったはずの生きがいを見失って途方に暮れている人もいるでしょう。自分が予想もしなかった出来事で生きがいを奪われてしまうこともあるでしょう。そして失くしたからといって「じゃあ、別の生きがいを見つけましょう」といった単純なことではなく、簡単に置き換えられないものだからこそ生きがいだったのです。

それでも、そのためなら寝食も忘れて走り続けられる、そんな生きがいを求めて探している人は、必ず生きがいが見つかるチャンスが巡ってきます。生きがいを見つけて走り続けるには体力も気力も必要、チャンスが訪れた時にすぐにつかめるように、待つ時間をどう過ごすのかも、とても大事なことなのです。

生きがいとは何か

簡単には見つからない、それが生きがい

簡単には見つからない、それが生きがい

生きがいを持っている人は輝いて見えます。自分もそういう何かを見つけたいけれど見つからない人は、生きがいのある人を見てうらやましく感じるでしょう。生きがいを感じられるような仕事や生活、趣味や活動を探している人も多いでしょう。

しかし、生きがいとは求めて見つかるものなのでしょうか。それとも、何事にも全力で取り組んでいるから生きがいが見つかるのでしょうか。

生きがいを、自分の外側にある「何か」に求めるだけでよいのでしょうか。

生きがいがあってハリのある人生を送っている人の光の部分だけをうらやみ、陰に隠れた内面の葛藤やもがく姿が生きがいにどう関わっているのかということは見過ごしていないでしょうか。

生きがいについて、生きがいを見つけるということについて、もう少し掘り下げて見てみましょう。

生きがいを感じて生きる人の2つの特徴

生きがいとは自己の目標と深いつながりがあることは、容易に想像できます。しかし、両者は重なりがあるものの、全く同じものではありません。

名著『生きがいについて』の中で、著者の神谷美恵子さんは、古今東西の哲学者や聖人の体験からにじみ出た言葉や、自身の喪失体験、長島愛生園でのハンセン病患者との交流体験などから、生きがいとは何かを追及し続け、書き綴っています。※参考 神谷美恵子、1967、『生きがいについて』、みすず書房

『生きがいについて』の中で、著者は、生きがいを感じている人とはどういう人か、大きく二つの言葉で表しています。

自己の目標がはっきりしている人

自己の目標がはっきりしている人

「自分はこの目標のために生きている」と実感できるような目標を持ち、自分が生きていることの必要を確信していることが、生きがいを持つ人の特徴の一つであると著者は言います。

目標は肩書や地位、仕事といった大きく取り上げられるものに限らず、人目につかない小さな営みの中にもあるものです。筆者は特にハンセン病患者やホロコーストの体験者など、苦難の道を生き抜いた人の言葉の中からそれを導き出しています。

使命感を持つ人

使命感を持つ人

もう一つの特徴は、その目標に向かって全力を注いで歩いていることだと著者は言います。そして、それを「使命感に生きる」と繰り返し表現しています。

仕事であれ趣味であれ、ボランティアや子育てであれ、目標を持つことは生きがいを探すうえで不可欠な要素ですが、自己実現だけを考えているうちは生きがいは見つからないのです。

どんな目標のもとに自分の小さな営みがあるのか、それに全力を注ぐ原動力はどんな使命感に支えられているのか、深く問い直させられる言葉です。

使命感とは、例えば医療従事者や先生など、初めから使命感を感じてその職業に就くようなものだけに限りません。他の人がやらないようなことに自分の目標を見出し、使命をもって発展させていく人もいます。

『生きがいについて』の中では、聖書の朗読に全身を貫くような大きな力を感じ、感覚の残った唇と舌で点字の舌読を始めた、長島愛生園の近藤宏一さんの例が挙げられています。近藤さんは愛生園の仲間と楽団も組んでいましたが、盲目で手足も麻痺している仲間のために、楽譜を舌読し、仲間に伝えることも行っていました。硬い点字で舌や唇を血だらけにしながらも、近藤さんは自分の舌読が仲間の役に立ったことに喜びを見出すのです。

こうした例を読むと、生きがいとは簡単に楽して見つかるものではないことが改めて胸に突き刺さります。

生きがいを探すために今すぐできる4つのこと

では、もう一度生きがいについてのキーワードを参考に、現代で生きがいを探すために何ができるかを考えてみましょう。

自分の中にある生きがいの種に目を向ける

自分の中にある生きがいの種に目を向ける

愛生園の近藤さんの場合は、友人が朗読していた聖書に大きな衝撃を受けたことから始まります。その聖書に触れるという体験は大きいですが、それが近藤さんの生きがいにつながったのは、近藤さんの内面や生き方の中に、それに何かを見出す種のようなものがあったからではないでしょうか。

インターネット社会では、それ以前では体験できなかったような実体験もバーチャルな体験も、身近なこととして簡単に手に入るようになりました。しかし、体験の機会や幅が広がっても、それを血肉にしたり、自分自身が変革してしまうような体験に昇華させるためには、体験する側にもそれに即反応し共鳴できるような何かがあるからでしょう。

自分がどんなことに突き動かされるか、全力を注げるか、誰のために力を出せるか、常日頃から自問自答しアンテナを張っておくと、いざその体験に出会えた時に、生きがいの種を芽吹かせることができるのではないでしょうか。

自分の営みを「使命感」という視点で捉えなおす

自分の営みを「使命感」という視点で捉えなおす

仕事であれ、ボランティア活動や趣味であれ、自分の生きる目標ややりたいこととしては考えますが、それを「使命=Mission」として考える人は多くはないでしょう。

医師や看護師、教師などは、使命を感じて目指す人も多いですが、すべての人がそうとは限りません。単に個人的技術や生計の手段として考えていれば、医療や教育の仕事であっても、生きがいという切り口で語ることはできません。

しかし、どんな仕事や営みにも使命を見出すことは可能です。今の自分の仕事や活動を、目標より大きな「使命感」という視点で捉えなおしてみましょう。

例えば飲食店でホールを担当する人は、笑顔でていねいな接客サービスを通して、訪れる家族や子どもたちに食事を楽しんでほしいと願い、そこに喜びや自分の使命を見出す人も多いでしょう。このように考えれば、個人的な理由で選んだ職業が、自分の生計のためだけではなく、出会う人や社会への貢献につながっていることを意識することができます。

多くの企業やNPOの理念にはそのようなミッションステートメントが盛り込まれていますが、個人のレベルではそれはそれとして企業の一員として心にとどめつつ、自分の使命をもっと柔軟に考えてもよいでしょう。

生きがいを待つ時間の過ごし方が重要

生きがいを待つ時間の過ごし方が重要

生きがいを見つけたい、生きがいを見つける手がかりが欲しいと多くの人は切に願います。しかし生きがいについての見方や考え方を深めるたびに、すぐに見つからないかもしれない、自分の中に生きがいにつながる種がなければチャンスを与えられても気づくことができないかもしれないと考える方も多いでしょう。あるいは、生きがいを見失い、つらい気持ちを抱えている方もいらっしゃるでしょう。

しかし、読者の方は、本心から生きがいを求めてこの記事を見つけてくださった方です。その時点でゼロではない、生きがいを見出すために、すでに動いて距離を縮めているのです。

焦る必要はありません。生きがいにつながる体験が来るまで、チャンスが来たらすぐに気づけるよう、準備する時間も必要です。生きがいのために、今すぐにでもできることはたくさんあります。

自分自身をふりかえる、向き合う、出会う、学ぶ、生きがいの種を育てる、そして次に述べるように目の前のことに全力を注ぐなど、生きがいを待つ時間を充実させることができれば、生きがいと出会いやすくなるでしょう。

今、目の前にあることに力を注いでみる

今、目の前にあることに力を注いでみる

生きがいに関する多くの記事は、「生きがい」と「やりたいこと」がうまく整理されていないこともあります。「やりたいこと」つまり「目標」に関することは、「生きがい」と重なる部分が確かに大きいです。しかし、それだけに焦点を絞ってしまうと、人や社会に支えられているという感覚や「使命感」といった、「生きがい」にまつわる大きな視点が欠けてしまいます。

今の職場はやりたい職種ではないから生きがいを感じられない、毎日にハリが感じられないという例は、確かに切実な悩みで身につまされます。ただ、心から生きがいを求めるのであれば、やりたい職種に転職することだけが答えではありません。

生きがいを見出したから全力で走れるというのも生きがいの本質なら、目標や価値を見出せないような目の前のことにも向き合い、使命を探して全力を注いでみる中で生きがいのチャンスが見つかる場合もあるでしょう。それもまた、生きがいを見出すための一つの方法なのです。

ミッション(使命)とアクション(行動)をつなぐ

ミッション(使命)とアクション(行動)をつなぐ

使命感やミッションという言葉は、慣れないと照れくささや気恥ずかしさを感じる方もいらっしゃるでしょう。しかし、『生きがいについて』を読むと、これ以上生きがいの本質を体現する言葉は見つかりません。

生きがいを求めるにあたって、今一度、使命感という言葉を手元にたぐりよせて、自分をふりかえるために使い慣れていくことも必要なのではないでしょうか。

使命感に照らして自分の行動を見直したり、常日頃の仕事や行動の中に自分の使命を見出していく、どちらも重要なことです。そして、そんなことを積み重ねながら自分を支えてくれている人や自然、社会とのつながりを再確認することは、社会のあり様が変わっても、欠くことのできない人間の営みなのです。

まとめ

生きがいを求めること、生きがいをキーワードに自分を見つめることは、時代が変わっても人が生きるうえで変わることのない大きなテーマです。生きがいを見つけた人も、生きがい探しの途上にある人も、自分が変わることを恐れることなく、自分や生きがいと向き合っていきましょう。