夢や目標はあるのに人生が思い通りにならない、本当はこんなはずじゃなかった、そんな気持ちを抱きながら生活するのはつらいですよね。
もし、今の大事な時間とエネルギーの大半を「あの出来事さえなかったら」、「ここは私の本当の居場所ではない」、「こんなはずではなかったのに」と考えることに費やすようであれば、まず、受け入れなければならないことがあります。それは、人生には自分の責任で「変えられること」と「変えられないこと」があるということです。
あるアルコール依存症からの回復を目的としたセミナーでは、「変えられることを変える勇気を、変えられないことを受け入れる平和を、その分別をつける知恵を私に授けてください」といっしょに唱和することから始めるそうです。
思い通りにいかないと思っている人は、その分別をつけることをせずに、変えられない自分の運命にこだわっている可能性があります。
それを手放して変えられることに乗り出すには、不安や恐れが伴います。それでも、少しでも自分の人生を生きたいと願う気持ちがあるのなら、現状から脱出し、新しい世界に一歩踏み出しましょう。
思い通りにならない人の特徴と行動
不幸な選択を繰り返す
人生が思い通りにならないと嘆く人は、「こんなはずじゃなかった」、「あの時こうなっていたら今頃は…」と思いながらも、いざという時になぜか自分を苦しみに追い込むような選択をしたり、その苦しみの中で安住しようとする傾向がないでしょうか。
例えば、自分や周りの人で、次のようなことをしてしまっている人はいませんか。
〇友人や同僚との親密な関係を望んでいるのに、なぜか自分から壁を作ってしまう。
〇幸せな結婚を望んでいるのに、なぜか幸せになれそうにない相手を選んで苦労する。
〇仕事やお金に関するチャンスが巡ってきても、しり込みしてチャンスを遠ざけてしまう。
〇全体的に、幸せに生きることに罪悪感があり、不幸な現状に安住してしまう。
変えられないことにこだわる
次のようなケースを考えてみましょう。
暴力と暴言で母親を苦しめる父親と、それに耐えられずに離婚し、女手一つで苦労して自分を育ててくれた母親。そのような家庭環境で育ったAさんは、自分は母親とは違って幸せな結婚をしたいと願っているのに、なぜか選ぶ相手はつきあうと態度を変え、自分を大切にしてくれません。Aさんは、両親のそんな姿を見て育ったせいで自分もパートナーとの付き合い方がわからないのだ、自分には幸せな結婚は無理なのだと考えています。
このケースの中で、Aさんが変えられないことと変えられることは何でしょうか。
子どもは生まれる家庭を選べません。何の罪もない幼いころのAさんが体験するにはあまりに割の合わない辛い出来事ですが、父親から母親への暴力、母親の苦痛や苦労、離婚、それにまつわる様々な出来事は、取り消すことのできない事実としてあります。
しかし、このような場合でも、Aさんは自分の考え方と未来は変えることができます。大人になった今、幸せな結婚をしたいという願いがあるのなら、そういう道を選べるのです。しかしそうしないのは、Aさんが変えられないことに足を掬われ、変えられることを変えずに自ら不幸な道を選んでいるのです。
幸せな人と不幸な人の分かれ目は
Aさんは選べるのに、無意識のうちに不幸を選択してしまっています。
もちろん、Aさんと同じような体験をしても、幸せになれるパートナーを探して結婚できる人もいます。幸せを選べる人と選べない人の違いはどこにあるのでしょうか。
それは、過去に自分の身に降りかかった出来事に対してどのように向き合うかにかかっています。
幸せを選べる人は、起こったことを事実として受け入れます。そして変えられる未来のために行動します。
それに対してAさんのように不幸を選んでしまう人は、「違う家に生まれてさえいれば」、「父親が暴力的でさえなかったら」と変えられないことを受け入れることに抗い、何度も反芻することにエネルギーを使ってしまいます。
幼いころの家庭環境、災害、事故など、つらい過去の出来事は時間を遡って消すことはできません。起こったことはあるがままに受け入れる、それが不幸な出来事に見舞われた時に取るべき姿勢なのです。
思い通りにならない人生を選んでいるのは自分
不幸な出来事は、残念ながら変えることができません。幼少期の大事な時期を幸せな気持ちで過ごせなかったことへの恨み、くやしさ、その時間を取り戻したいという気持ちはあっても、どれだけ望んでもそれは不可能です。
不幸な出来事を乗り越え、次に進むためのステップを確認しておきましょう。
Step1 自分の身に起こったことを受け入れる
Step2 変えられること/変えられないことを仕分ける
Step3 自分で変えられることに焦点を絞る
それでも、不幸を選んでしまう人は、自分の癖で自分の足を引っ張り、過去の出来事に逃げ込んでしまう傾向が強いのです。その、足を引っ張る何かをやっつけていかなければなりません。
幸せを選択していくために
幸せになると決めてイメージトレーニング
まず、変えられないことを手放して、未来の私は幸せになると決めてしまいましょう。この大きなビジョンを忘れてはいけません。自分に向かって、できれば親しい人の前でも宣言します。
途中で迷子になっても後戻りしても、このビジョンを持ってさえいれば、それに向かって軌道修正ができるのです。
イメージはできるだけ具体的に描き、繰り返し潜在意識に記憶させる必要があります。イメージ力のあるクリエイターなどは、いつも頭の中に浮かぶ映像を形にすることに慣れていますが、難しい方のためにアスリートやビジネスパーソンの間で使われているイメージトレーニングの方法をご紹介します。
イメージには内的イメージと外的イメージとがあります。
外的イメージは、テニスプレーヤーであれば、第三者の目線でコートに立ってプレーを眺めるような客観的なイメージのことで、フォームの修正などに役立ちます。幸せを思い描く際も、幸せな結婚をして親子3人で仲良く遊んでいる自分の姿、楽しく食卓を囲んでいる自分の姿などを動画で見るようにイメージします。
内的イメージは、自分の内側から主観的イメージすることで、自分の目線からボールの軌道や相手の動きなどを映像化したり、そのプレーをしている時の内面、つまり感情の動きや体の感覚などもイメージします。幸せな結婚をした自分から見える風景、子どもの世話をしている時の気持ちや頬ずりした時の肌触りなどを視覚的・感覚的にとらえます。
このように内的イメージと外的イメージを組み合わせることで、より鮮明に、体の感覚を伴ってイメージを潜在意識に刷り込むことができるようになります。
慣れてきたら、幸せな家庭で行われる問題解決のやり方もイメージしてみましょう。どんな家庭にも問題は起きます。経験的には暴力で問題をねじ伏せるやり方しか見てこなかったAさんも、違う方法を選んでイメージすることはできます。感情に振り回されずに子どもやパートナーの言い分を聞けている姿、言いたいことを攻撃せずに言えたときの感情や体の感覚などを繰り返しイメージしましょう。
思い癖を変える
幸せになりたいのになぜか足を引っ張って望まない選択をさせる、その正体はやはり自分です。具体的に言えば自分の思い癖です。これを放置すると、いつまでたっても幸せを選択できないだけではなく、イメージトレーニングの際にも妨害が入り、幸せのビジョンを描くのを難しくします。
具体的には次のような言葉です。
〇どうせ無理に決まっている。
〇どうせ私なんて愛される価値がない。
〇そんなことしても無駄。
〇苦手だからできない。
〇私には幸せになる価値なんてない。
こういう言葉をよく口にしたり思い描いているならば、注意が必要です。
過去につらい経験を繰り返すと、潜在意識はつらさや痛みの情報を積極的に集めて、それとは異質な情報を排除する方向で働きます。
この根強いマイナス思考の思い癖をプラスに転換させるためにも、イメージトレーニングで幸せビジョンを具体的に思い描いたり、上記のような思い込みは手放すかポジティブに書き換えていく必要があるのです。
自分の力だけでは難しい場合はセラピストなどの専門家の力を借りることも大事です。ただ、専門家の手を借りたとしても、思い癖を手放したり、書き換えることを選ぶことができるのは自分しかいません。できない理由を並べることをやめて、できる理由を作ることができるのも自分だけです。
ポジティブな思い癖を“あえて”形にしてみる
私は愛される価値がない、そういう思い癖のある人は、自分から愛されるための努力や行動も放棄してしまいがちです。
どうせ愛される価値がないのなら愛想笑いも必要ない、誰かに見せるためのメイクや服も必要ない、そうやって勝手に自分の行動を閉じていくので、誰かと出会うチャンスが来てもその波に乗ることができません。そのあとはご想像の通り、「やっぱり私には無理なんだ」というマイナスの思い癖の無限ループに落ち込んでいきます。
長らく慣れ親しんだ思い癖は、楽しくはないけれど、そこに安住していれば、誰かと真剣に向き合ってグサッと傷つくこともないから楽なのです。その殻から抜け出すには、形から入ることもおすすめです。髪型を変えたり、いつもと違ったメイクをしたり、普段なら「自分らしくない」と手を出さない服にも袖を通してみましょう。
今まで慣れ親しんだ自分とはちぐはぐなメイクや服にギャップを感じて、あーあとため息をつくかもしれません。最初はそれでもいいのです。大事なことは「“あえて”自分の殻を破る選択を繰り返す」、「それ楽しむ」ことなのです。
愛される価値ある私のイメージを実現してみて、違ったらまた別のことを試す、幸せな人もそれを繰り返しているのです。
もしかすると、意外なものが似合ったり、「似合わないけれど好きな服」が見つかって、それに合わせたいという新しい欲求を発見するかもしれません。
「“あえて”やってみる」、「頭で考えるだけではなく形にしてみる」は、現状に逃げ込んで動けなくなった自分を解放するための知恵なのです。
まとめ
何から何まで思い通りになる人はおそらくいません。けれど、幸せな人生を送っている人は自分の責任で変えられることに焦点を絞って、よりよい人生を求めて行動しているから、幸せにたどり着くのです。
幸せな選択をすることは、つらい経験をした自分を置き去りにしたり、裏切ることではありません。過去の自分も幸せになりたい自分も同じ自分、1人分の人生を幸せに生きる選択をする勇気を持って踏み出しましょう。