飲み会なんて時間とお金の無駄だから行きたくない、特に気の合うわけでもない上司や同僚に気を遣うだけで疲れる、あのカオスな雰囲気になじめない、そんな人にとっては飲み会の誘いは苦痛以外の何物でもありません。
本心では飲み会を楽しめる人たちがうらやましかったり、楽しめない自分に問題があるように思えてつらい気持ちを抱えている人もいるでしょう。かといって、みんなと同じように飲み会ではしゃぐこともできず、飲み会が苦行になってしまっている人もいるでしょう。
しかし、見方を変えれば、飲み会はあなたを人間的に一回り成長させてくれる要素がたくさん詰まった場なのです。飲み会を楽しみ、飲み会を通して成長するためのポイントとコツを押さえましょう。
飲み会嫌いの理由と本音とは?
まずは、飲み会嫌いの心の内をのぞいてみましょう。
酒が苦手で元が取れない
気の合う人だけでこじんまりと飲むのは好きでも、飲み放題プランの大型飲み会ではたくさん飲めないので肩身も狭く、元もとれないので楽しくありません。
お酒が苦手な体質的の人はなおさらですが、苦痛のほうが楽しさを上回ってしまいます。
コミュニケーションが苦手
飲み会は無礼講とよく言われますが、いつもの職場やゼミなどでは形式的なコミュニケーションで済むのに、飲み会では酔った勢いも手伝って、ずかずかと親密圏に踏み込まれることもあるものです。
それが楽しいのだという人もいれば、土足で自分の領域に踏み込まれたくないのでガードを固くしてしまう人もいます。また、コミュニケーションが長けている人は無礼講コミュニケーションもうまくかわすことができますが、コミュニケーションに苦手意識を持つ人はそれができずに、飲み会でストレスをため込んでしまうこともあるでしょう。
孤立しやすい壁の花タイプ
人が集まる場所が苦手な人、社交的な人とは話が合わないなどと考えてしまう人は、なかなか楽しい会話の輪に入っていけません。いつも壁の花になりがちで、時間も気持ちも持て余した経験があると、飲み会から足が遠のくようになります。
このタイプの人は、自分から話しかけるよりも声をかけられるのを待ち、周りの人こそ自分に声をかけるべきだと思っているため、その壁を破ることが課題となるでしょう。
高いお金を払って、楽しくない時間を過ごさねばならない
参加費が高いわりに酔っぱらいの相手ばかりで楽しくない、食事もいまいちだと時間やお金をドブに捨てたような割に合わない気持になってしまいます。特にコスパ意識が高い人は、せっかく参加するなら楽しい時間を過ごせるか、料理やドリンクが金額に見合っているか、人脈が広がるなど自分の得になることがあるかを常に意識しています。
このタイプの人は目先の個人的な損得には敏感ですが、飲み会にはそれとは別の次元で参加の意義があることに目を向ける必要があるでしょう。
仕事の一環だから仕方がない
飲み会を仕事の延長と捉えることにはメリットとデメリットが混在します。飲み会のくだけた雰囲気を利用してうまく上司と話をつけることができる人もいます。また、今では減りつつあるかもしれませんが、日本独自の接待文化では、飲み会は重要な商談の場として機能してきました。
ただ飲み会が苦手な人が飲み会の場に仕事の話を持ち込むことで、その場の空気を凍らせてしまうこともあります。基本的には仕事と飲み会は別物だと、きちんと線引きをしておいたほうがよいでしょう。
正しい飲み会との向き合い方―飲み会は儀式である
飲酒による健康や安全のリスク、失敗、時間とお金の無駄遣いなど、多かれ少なかれほとんどの人が飲み会の弊害やデメリットを感じています。
それでも飲み会が廃止されないのは、それが太古から人間にとって意味のある儀式だからです。
儀式としての飲み会、2つの意義
嫌いな人から見ると悪しき風習でしかない飲み会ですが、人類の歴史の中で重要な役割を果たしていることは否めません。
海外では日本風の飲み会はなくても、パーティーをはじめ、似たような機能を持つ場があることに気づくでしょう。そして、やっぱり「パーティーに行ってもどうせ壁の花だし、楽しくない」と似たような悩みを抱える人がいるものです。
それでも、時代によってルールや形は少しずつ変化しますが、次のような意義は変わることなく受け継がれています。
①大人になる、集団の一員になるためのイニシエーション(通過儀礼)
お酒を飲む場に若者を参加させるということは、これまで子どもの世界で生きてきた人を、大人社会の一員としてデビューさせるという意味があります。
また、新入生や新入社員を集団の一員として認めるための儀式のような意味合いもあります。形式的には入社式などがそれにあたりますが、飲み会はインフォーマルな形で「これからあなたはこの集団のメンバーですよ」と自他ともに認知し合うための場と言えます。
ですから、新入社員の歓迎会や退職する人の送別会などは、基本的に全員参加が暗黙の了解となっているはずです。個人的理由で気軽に断りにくいのは、儀礼的意味合いが強いからでもあるでしょう。
②つながりの再構築やメンテナンスの儀式
葬式は基本的には故人にお別れを告げ偲ぶためのものです。そして、葬式に参列するとしばらく連絡が途絶えていた親戚や友人など、故人を通じて関係のある人々と再び出会ったり、それをきっかけにまた関係が密になることがあります。葬式は残された人たちの関係性を再びつなぎなおす、いわばつながりメンテナンスのための儀式でもあるからです。
よっぽどの理由で絶縁状態にある人は別として、血縁やお世話になった人の葬式に参加しない人はいません。やむを得ない事情があったとしても、香典や弔電、お悔やみのメッセージをなんとか送ろうとするでしょう。それが人間社会の暗黙の了解であり、文化的マナーだからです。
飲み会にも同様の機能や儀式的な意味合いがあります。仕事上のライトなつながりだからと割り切って断れないのは、「つながりを紡ぎ直そう」という主催者の趣旨や呼びかけに応答しなければならないという、人間社会の一員としての一面が反応するからです。そして、つながりメンテナンスの儀式に参加することは、社会とのつながりを絶たないための人類の知恵なのです。
ですから、お酒に強い/弱い、人間関係の好き/嫌いといった個人的判断の次元を超越して、飲み会には全面的に参加を表明することが一般的には正しい態度であり続けるのです。
飲み会嫌いが飲み会で成長するためのコツ
儀式としての飲み会を内輪飲みや合コンのような娯楽レベルで捉えているうちはまだ未熟、人間としての成熟にはより高次の視点で捉え直す必要があります。
儀式としての飲み会は参加することに意義がある、参加して人間的に成熟するための場であるという認識で臨みましょう。
飲み会嫌いが飲み会で自分の殻を破って成長するためのポイントをまとめてみました。
飲み会は人間観察の場
飲み会ではアルコールの力も手伝って、職場やアルバイト、授業では見えない人間性や本音が出てくることがあります。よい面を発見することもあれば、普段は押し隠している本性が垣間見える場もあります。つまり飲み会は人間観察にうってつけの場なのです。
ただ、気をつけなければならないのは、自分自身も観察されているということです。飲み会や人間に対する向き合い方も、斜に構えた態度だとすぐに見抜かれてしまうことでしょう。
儀式としての飲み会、そこに集まる参加者への敬意を忘れないようにしましょう。
飲み会は情報収集の場
内輪の仲良し飲み会なら、年齢も趣味嗜好も近い人たちの集まりなので、自分の欲しい情報ばかりが集まるため、楽しいに決まっています。対して仕事やゼミなどの飲み会参加者は、年齢層も性別も、趣味嗜好も様々で、話が合わないからつまらないと考えている方も多いでしょう。しかし、そこを自分の狭い殻を打ち破るための情報の宝庫と捉えることができれば、飲み会の可能性は無限に広がります。
似たもの同士でつるまずに、あえて異なるタイプの人から得られる情報にアンテナを張ってみましょう。
飲み会は人間力向上の場
自分が好きなタイプの人以外とつきあう
儀式としての飲み会には、自分の好きなタイプの人が集まるとは限りません。むしろ、距離を置きたい苦手なタイプが多いことでしょう。
しかし、自分の苦手なタイプだからといって避けていては成熟した大人として信頼されませんし、自分の殻を破れない視野の狭い人物になってしまいます。
多様な人とのつながりの中で自分は生かされている、そう思うことができれば苦手な人とも向き合い、感謝できるようになるでしょう。
会話を続ける、リアクションを返す技術の向上
昨今では会話そのものよりも会話の内容や質が重視されるようになりましたが、人間のコミュニケーション、ひいては人間関係は要点や用件のみを伝えるだけ成り立つほどドライで単純なものではありません。
「あなたの話を聞いてるよ」、「あなたの話を受け止めたよ」というリアクションを返す姿勢そのものがコミュニケーションを成立させる基本であり、大原則なのです。
仕事やゼミでは簡潔に話すことが大事ですが、人間関係構築のためのコミュニケーションでは反応を返し続けることこそ大事なのです。
飲み会でのコミュニケーションは、まさにこのリアクションの技術を磨くのに最適の場所です。自分の守備範囲外の話、興味がない話をいかに面白く受け止められるか、それは相手の話術ではなく、自分の聞く姿勢や反応する力にかかっているのです。
感情に振り回されず笑顔で乗り切るトレーニング
苦手な人、酔っ払い…、社会には自分が苦手な人、自分なりの秩序を保とうとしてもそれをぶち破ってくる人がいるものです。しかし、だからこそおもしろいのだと気持ちを切り替えましょう。そう達観できるあなたは、周りから「余裕のある人」として一目置かれることでしょう。
ただし、無礼講コミュニケーションの場でそれらの人々に正面から対峙したり、感情を爆発させていてはエネルギーがもちません。酔っ払いや絡んでくる人のいなし方、逃げ方を実地で身につけ、感情に振り回されることなく、笑顔で乗り切りましょう。
周囲を見渡せばお手本になる人が必ずいるはず、よく観察して学びましょう。
飲み会を楽しく乗り切るためのマイルール
それでも、お酒の勢いでつい自分のキャパを超えた言動をしてしまうのが飲み会の怖いとろ、心身と相談し、以下の点について無理なく楽しめるマイルールを作っておきましょう。
〇お酒の量
〇退散のタイミング
〇自己開示の限度
〇参加すべき飲み会とそうでない飲み会の線引き
自分の心身を危険にさらすような飲み会からは距離を置き、自分の身を守りましょう。そんな飲み会をする職場やサークルなら、すでに日常において人間関係も信頼関係も破綻しているはずです。
まとめ
飲み会は人間的成長の場であり、つながりを紡ぎ直す儀礼としての場、毛嫌いしていてはもったいないのです。