特に望んでいるようではないのに出世できる人もいれば、出世したいと思って努力してもなかなかできない人もいます。その違いはどんなことでしょうか。
また、若いころから出世を考えている人もいれば、自分には出世なんて関係ないと思っていたけれど、年齢を重ねて周りが出世していく中で、出世について考える機会が増えたという人もいるでしょう。
混同されがちですが「出世する人」と「仕事ができる人」、つまり成果を上げることができる人の特徴は異なります。そこを混同して、方向性が違う努力を続けている人もいるのではないでしょうか。
出世に対する価値観は人それぞれですが、ポイントは「望んでなる」というよりは「望まれてなる」ものであるということです。ですから、「こうなりたい自分」と「望まれている自分」の接点を探していくことが大事です。出世とは、出世させたい人物とは?一企業の経営者や管理職、人事になったつもりで考えてみましょう。
出世に向いている人とは?押さえておくべきメリット/デメリット
「出世」という言葉は語感も響きもよさそうな言葉ですが、すべての人にとって前向きな言葉であるかといえば、そうでもありません。
出世することによるメリットもありますが、デメリットのほうを考えてしり込みしたり、無関係を決め込む人もいるでしょう。
これらのメリット/デメリットは実は紙一重で、人によってはメリットと感じることも、他の人にはデメリットと映ることもあるのです。以下がメリットと思える人は、出世に向いている人と言えるでしょう。
会社における地位の安定
このご時世、会社に勤めること=終身雇用という考え方は、社員や派遣社員にとってはもちろんのこと、管理職や経営者にとっても今や過去の神話です。
しかし、それでも昇進することで失職のリスクは多少は減り、地位の安定が図れます。家族にとっても、昇進による地位の安定は生計を立てていく上で、経済的な安心材料となるでしょう。
しかし、中には地位の安定=会社に縛られるというイメージを持ち、昇進をためらう人もいます。昇進を大船に乗ったと捉えるか、それとも不況の嵐が来たらさっと身を引くことを選びたいか、人によって考え方もリスクの取り方も様々です。
昇給
地位の安定とともに魅力と考えられるのが、昇給でしょう。特に家族を養う立場の人は、これを考えて昇進を目指す人も多いでしょう。しかし、昇給額が仕事量の増加や、責任の範囲の増大に見合うものかどうかは、会社の状況やそれぞれの考え方によります。昇進して給料も上がったけれど、割に合わない仕事量や責任、それに伴うストレスの増加なども計算に入れて、身近な上司や昇進した人の様子を見たり、よく話を聞いて判断をしたいものです。
組織を動かす責任
昇給に伴い、仕事の内容や質も変わります。特に必要とされるのは、課全体を動かしたりまとめたりする力と、統括者としての責任でしょう。責任のある仕事を任されることを喜びと感じるか、プレッシャーが大きすぎると感じるか、はたまたプレッシャーはあるけれどチャレンジととらえるか否か、人それぞれです。
判断力
昇進すると、組織を動かす大きな判断を下すことが増えます。課やプロジェクト全体の舵をとる心づもりがないと、このような大きな判断を下すのは難しいことです。
経営者マインドで考える、昇進させたい人の特徴
結論から言えば、いくら能力があってもスタンドプレイヤーは出世には向きません。能力があって成果が出せること=出世できる人という図式は成り立ちにくいのが現状です。
それではどんな人が出世の切符を手にできるでしょうか。それを考えるには、自分の価値観で物事を見るだけではなく、会社の経営陣、管理職、人事の立場に立って考えてみることが有効です。いくつかの視点に沿ってみてみましょう。
当然だけれど、この会社で生きていく覚悟がある人
職種を選ばず仕事や成果を出すことを生きがいにする人もいれば、職種や会社にこだわりがあって仕事をしている人もいます。昇進のチャンスを手にしやすいのは、後者のほうでしょう。上司は、特に今いる職場に愛着を感じ、この会社とともに成長したいという覚悟がある人に重要な役職を任せたいと思うものです。
学歴や派手なアピールは必要か
出世のためには積極的に自己アピールが必要だと思われがちですが、そうとも限りません。就職活動は初見の相手に自分がいかにその企業に貢献できそうと思ってもらえるかが大事なため、学歴などのわかりやすいアピールも相手に自分を知ってもらうための手がかりとして使えます。
しかし、何年も勤めた企業での出世となると、学歴、成果などのわかりやすい自己アピールが有効であるとは限りません。学歴や華やかな業績などの個人の能力をアピールできる人材は、条件さえ良ければ他社に移籍することを考えるからです。経営陣としては、流出していく短期決戦型の優秀な人材よりも、その企業を伸ばすことに貢献できるタイプの優秀な人材を好みます。
経営者マインドがあるか
与えられた仕事をきちんとこなして全うできることは大事ですが、出世する人はそれだけではなく、企業全体を俯瞰して眺めたり、経営者の観点から与えられた仕事の意味を考える力がある人です。
昇進を考えている人は与えられた仕事をこなすだけではなく、自分の仕事と他部署との関係、会社の中での意義を考える癖をつけるとよいでしょう。
個人プレーで成果を出すことより、役職をまっとうできる
自分が成果を出すことや能力を伸ばすことに力を注ぐ、いわゆるデキる人が出世に向いているかと言えばそうではありません。個人プレー型のデキる人は会社そのものよりも、その分野で成果を出すことに興味があるので、よりよい条件や環境を提示されれば簡単に転職するからです。
それに対して出世する人は、個人プレーがうまいかどうかというよりも、与えられた役職をしっかり全うできるタイプの人なのです。1人で成果を出すことよりも、チームで、職場全体を考えて動ける人が昇進しやすい人であると言えます。
マネジメント能力―任せることができる人
新人の頃は与えられた目の前の仕事で精いっぱいでも、昇進すると必要になるのは1人で抱え込まずに人に仕事を任せたり、職場全体をまとめる能力、つまりマネジメント能力です。自分の仕事もこなしながら、全体で円滑に仕事が進むように仕事の分配や配置、人員やスケジュールの管理も行わねばなりません。
自分でやったほうが早い仕事も、部下の成長や全体を考えて積極的に任せて進捗を見守ることも大事な仕事になります。
また、問題が起こった時に解決策を指示して実行させる能力も必要ですが、会社の未来を考えてさらに重要なのは指示する前に部下の口から解決策を引き出すために待つことです。
マネジメントを担うには労力とエネルギーの他、問題解決の経験知も必要です。マネージャーとしての芽があるかどうかは、年齢とは関係なく、上司が昇進させたい部下を選ぶ際の重要な視点となります。
上司や同僚との関係は
単なるイエスマン?
昇進するためには、上司に気に入ってもらうことは大事なことです。日常的な仕事の中での関係づくりはもちろん、飲み会や接待、休日のゴルフなど、上司との関係維持に気を使っている方も多いでしょう。
上司や会社の性格にもよりますが、上司のいうことをハイハイと聞くだけが出世の早道とは限りません。何でも言うなりになるイエスマンでもなく、対立するのでもなく、上司の意見を立てながら自分の意見や同僚の意見も伝えていける職場のコーディネーターやモデレーター的な人であることを心がけてみましょう。
当たり前のことですが、八方美人で、陰で上司の悪口やうわさ話をしているようでは、たとえバレなかったとしても昇進に向いているタイプとは言えないでしょう。
「育っている人」より「この人を育ててみたい」と思わせる人
昇進させると即戦力になりそうなタイプが上司に好まれるかと言えば、一概にそうとも言い切れません。むしろ、日本社会の企業では器用で抜け目のないタイプより、ちょっとくらい不器用だけれど誠実でがんばろうとする人のほうが上司の心をつかみやすいようです。
昇進したいけれど自分は不器用だから、能力が身についていないからとあきらめてしまわずに、仕事に対する誠実な姿勢を保ち、「こいつを育ててチャンスを与えてみたい」という上司の気持ちを引き出しましょう。育ててもらえるチャンスを得ることができれば、現状で力不足でも、学んで身に着けていくことができるようになります。
成果も大切だが、より行動力も
成果を上げることは大事なことですが、上司はそれよりも、成果を上げるためにどう動いているかをチェックしています。成果を上げた時は多少の独断も多めに見てもらえたり、見過ごされたりしがちですが、成果を上げられなかった時には、なぜそのような判断を下したのか、どんな根拠でそうしたのか、状況の改善のために何をしたか、協力体制は機能していたかなど、事細かにその時の行動が問われます。成果を上げていても上げられなくても、そのプロセス自体も会社にとっては大事な情報であり、スキルとなるのです。
また上司にとっては独断で成果を上げるのではなく、会社全体のチームプレーで成果を上げられるようになることのほうが重要な場合もあります。成果よりも、成果に向けてどう動ける人材なのかが昇進には大事なポイントなのです。
まとめ
そろそろ出世をと考える人も、この会社で昇進していくのかそうでないのかと迷う人も、出世について考えることで自分と仕事や家族の将来と向き合う機会になるのではないでしょうか。
昇進を目指すことだけが正解ではなく、昇進に伴うメリット/デメリットもあります。昇進を目指す人もそうでない人も、自分と仕事を考えるうえで参考にしてください。